「道を教えてください」

出典:座敷女
「道を教えてください」
あなたがもしもそう聞かれたら、道を教えるだろうか?
他人に何をされるか分からないのは今も昔も同じだが、凶悪犯罪が日々
激化するなか、もしかしたら教えないで断るという人もいるだろう。
だが、誰かが困っているならば助けてあげたいと思うのも心理。
ある男性は、夕方の路地で道を聞かれ、怖い思いをした。
「道を教えてください」
夕方の路地でそう話し掛けてきたのは背の高い女だった。
ボロボロの服を着て足が異様に細くバランスが取れないのかぷるぷると震えている。
僕に聞いているはずなのに視線はまったく違う方向を向いている。
「あ・・あの。どちらへ・・・?」
やばい人っぽい。
僕は早く答えて立ち去ろうと思った。
「春日谷町1-19-4-201」
「・・・・・・」
そこは僕のアパートの住所だった。
部屋番号までぴったりと合っていた。
「し、知りません」
僕は関わり合いたくないと本気で思い、そう答えた。
すると女はゴキッと腰が折れ曲がるほどにおじぎをして、
またふらふらと路地の奥へと消えていった。
「超こぇえ…」
僕はわざわざ遠回りをしてアパートに戻ってきた。
部屋のカギが掛かっているのを確認し、さっさと開ける。
「道を教えてください」
真っ暗な部屋の中から声がした。
出典:道を教えてください。
道を尋ねてくるのは大体がその場で会った知らない人であろう。
もしもその人が行きたい場所が、ピンポイントで自分の家だったら?
見るからに怪しい格好だったら?
もしも、家の中にいたら?
ストーカーとは恐ろしいものだ。