ご近所さんで、人形にいつも話しかけてる人がいた。ある日、「ごめんね、人形ちゃん」と言っていて…

ご近所さんで、人形にいつも話しかけてる人がいた

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ご近所さんで、人形にいつも話しかけてる人がいた。

でも、その人はいつもすごく綺麗な服で着飾っていて、あいさつも普通にするし、言葉遣いとかも上品な人だった。

ある時その人形に…。



13/08/06
10年くらい前、〇営住宅に旦那とまだ幼稚園だった娘との三人で住んでた時の話。

ご近所さんはみんないい人だったんですが、一人だけキチというかちょっと妙な人がいました。ここでは仮にAさんとします。

Aさんは、いつもすごく綺麗な服で着飾っていました。あいさつも普通にするし、言葉遣いとかも上品な人なんですが、常にその腕にはヨーロッパ系の人形が。で、人形にいつも話しかけている。

「人形ちゃん、泣かないで」

「よしよし、人形ちゃんはいい子ね」

と。

しかも、態度は普通なのによく見ると目つきがギラギラしてる。言っちゃ悪いのですが、なんか気持ち悪いというか、いたたまれないというか。「目」と「人形」以外は普通な人なだけよけいに。

詳しいことはご近所さんも誰もわからなかったようなのですが、自然と「昔子供を亡くしたから代わりに人形を抱いているのではないか」ということになっていました。

ある日の夜。

ちょっと近所に用事があった帰り、駐車場近くのゴミ捨て場でAさんに遭遇。しかし、その時のAさんはちょっといつもと違いまして。

「ごめんね、人形ちゃん」

なんか、そんなことをぼそぼそとずっとつぶやいている。そしてゴミ捨て場には件の人形。

え?と思っているとAさん、今度は

「ごめんね、待てないママで」

と言いながら、何もない空を軽く握る動作。まるで隣に誰かがいるように。その時点で鳥肌が立っていたのですが、ここでAさん、私に気付いたようで

「あら私さん、こんばんわ」

なんて言う。

それも、表情がまるで憑き物が落ちたというか、ギラギラしてた目が穏やかになっていたというか。何というか、今までのAさんじゃないみたいでした。

と、Aさんが唐突にこんなことを言いだした。

「あ…私さんのところも『あっち』から帰ってきたんですね」

「はい?」

「うちの子も、ほら、手を離しちゃダメですよ?」

「はあ……」

「うふふ、また『あっち』に行っちゃいますから、今度はちゃんとつかんでなきゃ」

「あの、一体何の話を……」

「何って、ほら、ちゃんと息子さんつかんでなきゃダメですってば」

私、鳥肌。ずっとAさんは私の足元を見て話していた。『あっち』という言葉を強調していた。時おり自分のとなりの誰かに笑いかけていた。

それ以上に、「息子さん」という言葉を発したことに鳥肌が立った。

実は私、娘を産む以前に一度、死産を経験。その子の性別が男の子だったのです。当然、そんなことAさんが知るよしもない、じゃあ……

きびすを返して、一目散に自宅へ逃亡。

その月のうちに、また別の〇営住宅街へ引っ越すことを夫に必死で認めさせました。幸いというべきかそう離れてもいなかったので、娘は転校を経験せずにすみました。

今にして思えば自分の子のことですし、何をそんなに怖がったのかという感じですが、当時はしばらく悪寒を覚えていた出来事です。